ある雨の日
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本屋であるデザイナーの本をみつけて、
この人はどんなことを書くのだろうと少し眺めてみた。
文章が上手いなと、才能のある人だなと、感心してしまった。
その人のいう「存在」とは何だろう、と少し考えながら
雨の中を歩いていると、視線の先に画廊の看板が目に入った。
確か覚えのある名前だなと思い階上へ上がって行くことに。
画廊といってもいわゆる画廊は好きじゃない。
ガラスの向こうに女性が一人。
前にみた場とは違うなと思いながら
このまま戻ろうとしたら、どうぞお入り下さいと言われ、
大きなガラスのドアをゆっくり押して中に入った。
「絵がお好きなんですか?」
「いいえ、絵をみるのはあまり好きじゃなくて。」
・・・言わなくてもいいことをつい言ってしまう私・・・
「場の雰囲気が好きなんです。」
「そうなんですか。」
絵が数点飾ってあったけれど好きな絵ではない。
入り口に置いてあった大きな梱包が片付くと、
其処の空間が広くなって、一気に美術独特の空間が現れた。
何もないほうが場の力を感じる時があって、この時がそれだった。
この空間が現れるということは、
それなりの美術の歴史がある画廊に違いない。
勝手にこの場の歴史を光の速度で映像化した。
彫刻が少し置いてあって、彫刻は結構いいいなと思った。
そこに以前目にしたことのある、あの作品(彫刻ではない)がある。
やっぱり作品を見たのはこの画廊だ!
しかし、どう思い出しても、前とは場が違う。
部屋の大きさも違う。
10年ほど前としても記憶間違いはしない。
会話しながら外に出たら女性も一緒に出られた。
出てすぐ隣に別の部屋があって、そちらに案内された。
部屋に入った瞬間、ここだ!と思った。
「ここで前に作品展をしたんですよね。」
「はい、そうです。」
照明がすべて点いた。
奥にピアノが置いてある。
程よいそっけなさの小さな美術館的な雰囲気が
何ともいえず好きで、感動が波のように襲ってくる。
沖縄ではじめての場の体験。
まずい、涙が出そうだ。
このままここにいると、きっと泣いてしまう。
お礼を言って立ち去ることにした。
逃げるように外にでた。
久しぶりに私のことを考えた。
by mayufuru
| 2010-04-22 00:24